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L-カルニチン

L-カルニチンの概要

L-カルニチン(γ-trimethyl-β-oxybutyrobetain)は、長鎖脂肪酸をミトコンドリアマトリックスに輸送する必須アミノ酸であり、1905年に肉より単離、発見されました。

1930年代に構造式が同定され、生理学的および薬理学的研究が実施されましたが、生理学的作用までは特定できませんでした。48年にFraenkelらにより穀粉害虫のミルワーム(Tenebrio molitor;黄色コメゴミムシダマシ)や類縁のPalorus ratzeburgi(コクヌスットモドキ科)の成長と生命維持に必要な成分として酵母、肝臓、または乳汁、乳清中に見出されたところから研究が再び開始されました。このためL-カルニチンはビタミンBTと呼ばれることもありましたが、生体内で合成されるところから厳密な意味でビタミンではありません。

やがて、L-カルニチンが脂肪の酸化に必須の成分であることがわかり、1970年代にヒトにおけるL-カルニチンの欠乏症の報告が行われ、L-カルニチンが正常なエネルギー代謝を維持するために補充することが必要であることが確認されました。


1.L-カルニチンの生合成

L-カルニチンは必須アミノ酸のリジンとメチオニンによってヒトの体内で生合成されます。

哺乳類の場合、S-アデノシルメチオニン(S-Adenosyl-Methionine;SAMe)による遊離リジンの段階的メチル化(トリメチル化)により、トリメチルリジンが合成されます。その後、トリメチルリジンは、一連の酵素反応により肝臓や腎臓を主に脳・心臓や骨格筋内でブチロベタインに転換されますが、ブチロベタインからカルニチンに転換するための酵素であるブチロベタイン-ヒドロキシラーゼは肝臓・腎臓および脳のみに存在することがわかっています。

カルニチンには2つの光学異性体が存在しています。そのうち、ヒトの体内にはL体のみが存在しており、有害なD体は存在していません。

生合成2つの必須アミノ酸以外に3つのビタミン(C、ナイアシン、B6)と金属イオンの鉄が必要で、これらの1つでも欠如すればカルニチンの合成に支障が出ます。

また、L-カルニチンの合成に不可欠なブチロベタイン-ヒドロキシラーゼは年齢依存性であることがわかっており、その活性は正常な成人の生合成量を基準に比較すると、乳児期で約10%・3歳児で約30%・15歳で成人レベルに到達すると言われていますので、母体と胎児期および乳児期におけるL-カルニチンの重要性が推察されています。


(1)リジンとは、
必須アミノ酸のひとつで塩基性α-アミノ酸に属する。L-リジンは殆ど全ての蛋白質の成分であり、特にヒストン、アルブミン、筋肉蛋白質に多いことがわかっています。

(2)メチオニンとは、
重要な含硫アミノ酸(γ-メチルチオ-α-アミノ酪酸)で、天然型はL-型のみで蛋白質の水解物中に見つかりました。栄養学的に高度の必須アミノ酸でメチオニンの欠乏した生物価は本質的に低いことがわかっています。日本人の食事は最もメチオニンが不足しやすいことがわかっています。メチオニンの2大機能は、①SH(チオール)基の供給源、②CH3(メチル)基供給源としてコリン、クレアチンなどを生成することがわかっています。


2.L-カルニチンの分布と代謝

心臓と骨格筋は、他の殆どの組織と同様に脂肪酸の酸化によって活動エネルギーを得ています。しかし、酵素が存在しないためカルニチンの合成が出来ません。そのため、カルニチンの輸送が非常に重要であるといえます。

L-カルニチンに結合した特殊な蛋白が心筋・骨格筋・精巣上体・肝臓および腎臓において確認されておりますので、拡散による輸送機序だけでなく輸送担体による能動輸送によって、組織は血清中の10倍ものL-カルニチン濃度を得ることができます。


3.L-カルニチンの排泄

L-カルニチンの主な排泄経路は、未変化体のまま排泄されます。腎臓の尿細管におけるL-カルニチンの再吸収は効率的に行われます。通常成人の場合、L-カルニチンの代謝回転率は全身の貯蔵量の4~6%に過ぎないと推察されています。

したがって、それ以上の代謝や排泄がL-カルニチン欠乏症の原因となっています。


4.L-カルニチンの生理機能

L-カルニチンの基本的な機能は、長鎖脂肪酸のミトコンドリアマトリックスへの輸送とβ-酸化の促進です。小胞体やミトコンドリア外膜で生成された活性脂肪酸のアシル-CoAは、そのままではミトコンドリアマトリックスを通過できないため、アシル基はCoAからL-カルニチンに結合する必要があり、アシル-カルニチンとなってミトコントリア内膜を通過しマトリックス内に輸送されβ-酸化を促進します。

また、L-カルニチンは精巣上体や精子において重要な働きを行っています。特に、精巣上体は脂肪からエネルギーを得ていると考えられており、精子も精巣上体を通過する際に同様の作用を得ていると考えられています。精子のエネルギーは、糖(フルクトース)や乳酸のほかL-カルニチンの代謝産物であるアセチル-L-カルニチンから得られると考えられており、精子の運動性にはアセチル-L-カルニチンの機能が特に重要であることが推察されています。