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L-カルニチン

L-カルニチンの有用性

生殖医療

近年、L-カルニチンは生殖医療に有用であるという報告が行われています。その有用性は以下の6点です。

  1. 難治性排卵障害に対する効果
  2. 卵子や胚の質の向上
  3. 胎児胎盤機能の向上
  4. 精子の運動性の向上
  5. 精子数の増加
  6. 性機能の改善

生殖医療にあたって以上の点をご参考にしてください。


母子の健康

母と子

L-カルニチンは妊娠中および出産後の母子の健康にきわめて重要な役割を果たしています。

妊娠中
胎児およびへその緒における血中L-カルニチン濃度が、母親の血中濃度より高いことがわかっています。その理由は、胎児においてはL-カルニチンの生合成機能の発達が不十分であることから、それを補うために母体からL-カルニチンが大量に供給されているからです。胎児にL-カルニチンを供給するために、妊娠中の母体は一時的にL-カルニチンが欠乏している状態になります。そこで妊娠中の母子の健康を維持するためには、母親に対して外部からのL-カルニチンの補給が欠かせません。

出産後
新生児は胎児の時と同じくL-カルニチンの生合成機能は未発達のままです。これを補うのが母乳です。しかし、母体自体がL-カルニチン欠乏状態では十分な補給ができません。そこで、母親は継続的なL-カルニチンの補給が必要です。また、牛乳由来の調合乳の場合、加工時にある程度の量のL-カルニチンを失います。大豆由来の調合乳の場合はL-カルニチンがほとんど含まれていません。このため、調合乳を用いる場合は、新生児に対してL-カルニチンの補給を行う必要があります。


男性不妊症

父と子

L-カルニチンは男性の不妊症に関連する機能の改善につながることが様々な報告で明らかになっています。精子の運動性の向上については、60名の不妊症男性患者へL-カルニチン(2g/日)とL-アルチル-カルニチン(2g/日)を6カ月間投与したところ、精子の運動性が向上したという報告があります1)

また、精液所見正常精液と比較し、乏精子症、乏精子・精子無力症および無精子症患者の精液では、精漿中のカルニチン濃度が低下することがわかっています。英ウィメンズクリニックの塩谷氏らの研究グループは精漿総カルニチン濃度の測定を行い、精子濃度との相関性を検討。精漿中のカルニチン濃度は精子濃度と正の相関(R=0.443)があることを確認しました2)。なお、同研究は当社が協力しています。

さらに性機能の改善については、勃起不全(ED)患者に3カ月間、プロピオニル-L-カルニチン、L-アルギニンおよびナイアシンを配合したサプリメントを摂取させる調査が行われ、40%の患者が勃起を改善したという報告が行われました3)

参考文献:
  1. Lenzi A. Sgro P. Salacone P. Paoli D. Gilio B. Lombardo F. Santulli M. Agarwal A. Gandini L. A placebo-controlled double-blind randomized trial of the use of combined l-carnitine and l-acetyl-carnitine treatment in men with asthenozoospermia. Fertil. Steril. 81:1578-1584 (2004)
  2. 魚住卓矢、王堂哲、緒方洋美、岩崎利郎、松本由紀子、苔口昭次、高津寛、山口耕平、石川智基、塩谷雅英:精液所見と精漿総カルニチン濃度の相関についての検討.日本IVF学会雑誌Vol.17 (2014) No.2 p.67
  3. Gianfrilli D, Lauretta R, Di Dato C, Graziadio C, Pozza C, De Larichaudy J, Giannetta E, Isidori AM, Lenzi A. Andorologia. 2012 May;44 Suppl 1:600-4

循環器

L-カルニチンは循環器疾患の改善が期待できるということが明らかになっています。狭心症に関する有効性としては、2g/日のL-カルニチンを半年間経口投与することが心機能の改善と運動機能の向上をもたらすという報告があります1)。また、1g/日のL-カルニチンを1日2回4週間経口投与することで運動耐性が有意に向上するという結果も出ています2)

心筋梗塞後の合併症等への有効性も報告されています。急性心筋梗塞が疑われる患者に2g/日のL-カルニチンを28日間経口投与した結果、細胞障害と脂質過酸化が有意に低下し、狭心症や左心室肥大、不整脈など合併症発症が有意に低かったという結果が出ています3,4)。また、心筋梗塞と診断された患者に4g/日のL-カルニチンを12カ月間経口投与した結果、有意な心拍数や収縮期の動脈圧、脂質パターンの改善が示されたほか、死亡率の有意な低下も示されました5)

近年、脂肪酸はミトコンドリア機能に影響を与え、細胞をアポトーシスに誘導することが明らかになっています。ミトコンドリアの脂肪酸取り込みに不可欠とされるL-カルニチンは、こうした脂肪酸誘導性ミトコンドリア機能障害を軽減させ、心筋細胞アポトーシスを減衰させる働きが示唆されています。サプリメントとしてのL-カルニチン摂取や、L-カルニチンを多く含む食品の積極的な摂取は、脂肪酸由来の急性心筋傷害に対して有効な予防効果を発揮する可能性が考えられます6)

参考文献:
  1. Cacciatore L. Cerio R. Ciarimboli M. Cocozza M. Coto V. D'Alessandro A. D'Alessandro L. Grattarola G. Imparato L. Lingetti M. et al. The therapeutic effect of L-carnitine in patients with exercise-induced stable angina: a controlled study. Durugs Exp. Clin. Res., 17: 225-235 (1991) PMID: 1794297
  2. Cherchi A. Lai C. Angelino F. Trucco G. Caponnetto S. Mereto P. E. Rosolen G. Manzoli U. Schiavoni G. Reale A. et al. Effects of L-carnitine on exercise tolerance in chronic stable angina:
    a multicenter, double-blind, randomized, placebo controlled crossover study. Int. J. Clin. Pharmacol. Ther. Toxicol., 23(10): 569-572 (1985) PMID: 390563
  3. Singh R. B. Niaz M. A. Agarwal P. Beegum R. Rastogi S. S. Sachan D. S. A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of L-carnitine in suspected acute myocardial infarction. Postgrad. Med. J., 72: 45-50 (1996) PMID: 8746285
  4. Iliceto S. Scrutino D. Bruzzi P. D'Ambrosio G. Boni L. Di Biase M. Biasco G. Hugenholtz P. G. Rizzon P. Effects of L-carnitine administration on left ventricular remodeling after acute anterior myocardial infarction: L-Carnitine Ecocardiografia Digitalizzata Infarto Myocardico (CEDIM) trial. J. Am. Coll. Cardiol., 26: 380-387 (1995) PMID: 7608438
  5. Davini P. Bigalli A. Lamanna F. Boem A.Controlled study on L-carnitine therapeutic efficacy in post-infarction. Drugs Exp. Clin. Res., 18:355-365 (1992) PMID: 1292918
  6. 矢野博己、Michael J. Kremenik、長野隆男:L-カルニチンの脂肪酸に対する心筋ミトコンドリア保護作用。川崎医療福祉学会誌、2013, 23(1):27-36

腎機能

腎不全では血液透析治療が必要です。しかし、透析を行うと体内のカルニチンが体外に流れ出てしまうためカルニチンが欠乏し、貧血や低栄養を引き起こします。このため、透析患者にはL-カルニチンの補給が必要な処置とされています。最近になってわが国においては、透析患者に対するL-カルニチンの経口・静注治療が可能となりました。久留米大学医学部内科学講座腎臓内科部門の深水氏らの研究グループは、血液透析患者に対するL-カルニチンの経口投与が貧血や栄養状態がいかに影響するかについて研究し、2014年にその結果を日本透析医学会雑誌で発表しました。研究の結果、カルニチンが欠乏している透析患者に対しL-カルニチンを経口で投与すると、貧血や栄養状態のみならず肝機能も改善する可能性を見いだしました。

参考文献:
深水圭:血液透析患者に対する経口・静注L-カルニチン補充療法がカルニチン濃度に与える影響とその効果についての検討.日本透析医学会雑誌,Vol.47 (2014) No.6 p. 367-374


非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

肝臓内に中性脂肪が蓄積した状態を脂肪肝と言います。これは過栄養や過度の飲酒を原因とする病態ですが、アルコールをほとんど飲まない人にも起こり、これを非アルコール性脂肪肝と言います。これが進行すると肝硬変や肝がんに進む危険性のある「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」という疾患に至る可能性があり、近年増加傾向にあります。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学教室の高木章乃夫准教授らのグループは、NASHに対してカルニチンが有効であることを、脂肪性肝炎・肝がん動物実験で明らかにしました。この研究結果は2014年7月1日に米国のオンライン総合科学雑誌『PLoS One』に掲載されました。カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリア内部に取り込む時に必須の役割を担う成分です。NASHの場合、ミトコンドリアの機能低下が病気の進展に関与していることが明らかになっています。このためミトコンドリアの機能を改善するためにカルニチンを積極的に摂取することが有効だと考えられます。

参考文献:
Ishikawa H, Takaki A, Tsuzaki R, Yasunaka T, Koike K, Shimomura Y, Seki H, Matsushita H, Miyake Y, Ikeda F, Shiraha H, Nouso K, Yamamoto K. L-carnitine prevents progression of non-alcoholic steatohepatitis in a mouse model with upregulation of mitochondrial pathway. PLoS One, 2014, 9, e100627. (doi: 10.1371/journal.pone.0100627. eCollection 2014).