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L-カルニチン

生殖医療

生殖医療

わが国の体外受精による出生児数は平成22年(2010年)に2万8,945人となりました。これは総出生児数の2.7%を占めています。平成16年(2004年)が1.64%ですから1%以上増えていることになります。平成22年時点で不妊治療を行う女性は47万人以上いたという統計もあり、23年(2011年)統計ではカップル6組に1組の割合で不妊治療を行っています。今や不妊治療は特別な事情を持った人の治療ではなく、今後もますます不妊治療を行うカップルが増えていくことは確実であると思われます。


女性生殖
L-カルニチン投与で体外受精による受精率や妊娠率などが上昇

第30回日本受精着床学会総会・学術講演会(平成24年8月30日〈金〉~31日〈土〉;大阪国際会議場)において「L-CAR AA Basic(LAB)」(チュアブル錠)を用いた学会報告が2題行われました。

1つは、IVF反復不成功例28症例に対しLABを用いたところ、胚盤胞到達率(16.2%vs69.3%;p<0.01)および妊娠率(25.0%vs64.7%;p<0.05)とLAB摂取群と比較して摂取後に有意に上昇したという報告です。

もう1つは、体外受精において胚質が不良であると認めた29症例に対し、LAB摂取前後の体外受精周期の採卵数、卵成熟率、受精率、分割期移植可能胚率、胚盤胞到達率、良好胚盤胞率、肺移植あたりの妊娠率を比較しました。その結果、LABの摂取により、受精率(78.5%vs83.8%;p=0.71〈発表の数値に修正しています〉)、胚盤胞到達率(30.9%vs50.0%;p<0.05)、良好胚盤胞率(14.3%vs40.0%;p<0.01)、胚移植あたりの妊娠率(19.0%vs51.7%;p<0.05)が有意に上昇したことから、LABは胚質不良により肺移植や妊娠に至らなかった症例に対し有効であることが示唆されたという報告です。


2013年9月発行の日本補完代替医療学会誌Vol10/No.2に「体外受精反復不成功の妊娠・出産例:L-カルニチン含有食品の有用性に関する一考察」が掲載されました。以下の通りです

〈少子高齢化がすすむ我が国では、不妊症治療の重要性はますます高まり、不妊治療の患者数(全体)は推計466,900人(平成14年度厚生労働省調べ)と年々増加していることが分っている。不妊治療に関しては、本学会誌にも2009年に「難治性排卵障害患者にL-カルニチンとデヒドロエピアンドロステロンが奏功したと思われる一症例」が報告されている1)が、今回我々もL-カルニチンが不妊症治療に有用であると思われた一例を経験したので報告する。

【症例】症例は、38歳女性、不妊治療歴は8年、体重54kgで、子宮内膜症、アトピー性皮膚炎、慢性気管支炎を合併した症例で、体外受精を過去5回施行するも不成功であった例である。2011年11月に外来を受診後、健康目的でL-カルニチン(LC)を含有した保健機能食品(L-CAR AA Basic Gold、株式会社AAプロジェクト:以下LAB)の摂取を開始したので経過を観察した。LCの摂取量は、一日当たり1000mgであった。摂取4カ月目に、5年間凍結保存していたG4グレードの胚を移植したところ妊娠が成立した。患者は妊娠中もLCを継続し、摂取量は一日当たり333mgと非妊時の3分の1であった。なお、10年間続いた慢性気管支炎症に伴う量が多い喀痰の症状は摂取2週間程度で消失した。妊娠経過は順調に推移し、2012年12月25日妊娠37週で3067gの女児を帝王切開により出産した。

【考察】LCはカルニチン欠乏症であるプロピオン酸血症、メチルマロン酸血症や透析後の全身性カルニチン欠乏症に対して保険薬(レボカルニチン製剤:錠剤・注射剤)として認可されているが、近年その安全性の高さから食品としての使用も認められたもので、LCは遊離脂肪酸(FFA)とミトコンドリアに運搬しATPを産生するために必要な必須の栄養素であり2)、LCの生殖領域の研究報告も増えている。また、LCが卵胞成熟過程に重要な役割を有しているとする報告3,4)やLCが精子の成熟を促進し2)、運動率を向上する2)とする報告もみられる。さらに、LCはミトコンドリアの保護やアポトーシスの抑制などミトコンドリアの機能を調整する重要な働きがあるとされている5)。不妊症治療のGolden standardともいえる体外受精では、一般的に卵子数を確保するため前処置として下垂体性性腺刺激ホルモン製剤であるHMGやFSHを大量に投与する過排卵処理(COH)を行うが、一方ではCOHにより残存する卵胞数が減少するという問題も生じている。これはCOHの際、卵胞の顆粒膜細胞から活性酸素が大量に放出され、酸化ストレスによりミトコンドリア機能が低下し、卵巣の老化と卵子の機能低下が誘発するためと考えられており、特にLC投与によってCOH5回目以降の卵胞成熟率が良好のまま維持されていたという報告もみられる3)。また、体外成熟培養におけるウシ卵母細胞の細胞質成熟にもLCが適度依存的に卵丘細胞のアポトーシスを抑制し、生存率を高め胚盤胞到達率を高めることも示唆されている4)。ブタでも同様にLCが体外成熟培地のグルコースの存否に関わらず卵母細胞の成熟を促進することが報告されている6)

今回われわれが経験した例は、5年前に凍結保存した受精卵の妊娠成功例であるが、最近の報告でも胚質が悪く妊娠に至らなかった症例に対してLC投与によって胚質の改善が見られた結果が報告されている7,8)。さらに、凍結胚での妊娠率が投与前の対象群が0%(14例中0例)であったものが、LC投与により40.0%(15例中6例)まで有意に改善したとする報告9)もなされている。

本例のようにG4グレードという胚質の低い症例であっても妊娠・出産に至る例があることは、不妊症に悩む患者には朗報となると考えられ、今後さらなる症例の集積が望まれる。


第32回日本受精着床学会・学術講演会(平成26年7月31日〈木〉~8月1日〈金〉、ハイアットリージェンシー東京)において「良好胚率が50%以下の症例に対するL-カルニチンの有効性」が報告されました。

体外受精において良好胚率が50%以下の26症例(採卵周期29周期・平均年齢40.1歳)にL-カルニチン(対象期間はチュアブル錠)1000mgを連日経口摂取。摂取後の成熟率(80.3%vs88.3%;p<0.05)、分割期良好胚率(41.9%vs64.1%;p<0.01)、良好胚盤胞率(12.8%vs32.4%;p<0.05)が自然周期・刺激周期ともに有意に上昇したという報告です。


第58回日本生殖医学会学術講演会(平成25年11月15日〈木〉~16日〈金〉、神戸国際会議場・神戸ポートピアホテル)において、LAB(チュアブル錠)を用いた学会報告が行われました。平成24年の日本受精着床学会総会・学術講演会における報告に引き続き、胚および良好胚盤胞の有意な質の向上について報告されました。


参考文献:
  1. 西 修.難治性排卵障害患者にL-カルニチンとテヒドロエピアンドロステロンが奏功したと思われる一症例.日本補完代替医療学会誌.2009; 6(2): 119-121.
  2. Jeulin C, Lewin LM. Role of free L-carnitine and acetyl-L-carnitine in post-gonadal maturatiom of mammalian spermatozoa. Hum Reprod Update 1996; 2(2): 87-102.
  3. Miyamoto K, Sato EF, Kasahara E, Jikumaru M, Hiramoto K, Tabata H, Katsuragi M, Odo S, Utsumi K, Inoue M. Effect of oxidative stress during repeated ovulation on the structure and functions of the ovary, oocytes, and their mitochondria. Free Radic Biol Med 2010; 49(4): 674-681.
  4. 大坪 大輔, 山田 多恵, 今井 裕ら.体外成熟培養におけるウシ卵母細胞の細胞質成熟に及ぼすカルニチンの効果.第97回日本繁殖生物学会.2004.
  5. 王堂 哲, 井上 正康.-カルニチンによるミトコンドリアの品質管理とアポトーシス制御.栄養―評価と治療.2009; 26(1): 55-57.
  6. 赤木 有香, 橋弘 晃.体外成熟培地へのカルニチン添加がブタ卵母細胞の核成熟に及ぼす影響.日本畜産学会第108回大会.2007.
  7. 井田 守, 小川 久仁子, 松本 寛史, 小倉 里香, 岡村 太郎, 山本 あゆみ, 榮村 京子, 荻野 友貴子, 福田 愛作, 森本 義晴.ワークショップ(臨床3)ARTと統合医療,当院における統合医療システム.第30回日本受精着床学会抄録集.2012: 141.
  8. 小倉 里香, 井田 守, 岡村 太郎, 森 梨沙, 藤岡 聡子, 福田 愛作, 森本 義晴.胚質不良例に対するL-カルニチンの有効性に関する検討.第30回日本受精着床学会抄録集.2012: 266.
  9. 小倉 里香, 松本 寛史, 井田 守, 福田 愛作, 森本 義晴.胚の質不良例に対するL-カルニチンの有効性に関する検討.日本IVF学会誌.2013; 16(1): 42-45.

男性生殖

L-カルニチンは精子の運動性を向上させる

精子の運動性の向上については、60名の不妊症男性患者へL-カルニチン(2g/日)とL-アルチル-カルニチン(2g/日)を6カ月間投与したところ、精子の運動性が向上したという報告があります1)。また、弊社のL-カルニチンサプリメント「L-CAR AA Basic(LAB)」を摂取したことで妊娠率が高まった結果を医師会主催の講演会で発表しました。まず精子活性の低い患者さんにLABを摂取していただいたところ、44%という高い妊娠率が確認されました。次に同じく精子活性の低い116名の方にLABを摂取していただいた結果、28名のカップルに妊娠が確認されました。


カルニチン濃度が高いと精子濃度も高い

乏精子症、乏精子・精子無力症および無精子症患者の精液と精液所見正常精液と比較したところ、前者の精漿中のカルニチン濃度が低下していることがわかっています。英ウイメンズクリニックの研究グループは精漿総カルニチン濃度の測定を行い、精子濃度との相関性を検討。精漿中のカルニチン濃度は精子濃度と正の相関があること、すなわちカルニチン濃度が高い場合、精子濃度も高いことを確認しました2)。なお、同研究は弊社が協力して行われたものです。


L-カルニチン摂取でED患者の40%の勃起が改善

性機能の改善については、勃起不全(ED)患者に3カ月間、プロピオニル-L-カルニチン、L-アルギニンおよびナイアシンを配合したサプリメントを摂取させる調査が行われ、40%の患者が勃起を改善したという報告が行われました3)

参考文献:
  1. Lenzi A. Sgro P. Salacone P. Paoli D. Gilio B. Lombardo F. Santulli M. Agarwal A. Gandini L. A placebo-controlled double-blind randomized trial of the use of combined l-carnitine and l-acetyl-carnitine treatment in men with asthenozoospermia. Fertil. Steril. 81:1578-1584 (2004)
  2. 魚住 卓矢, 王堂 哲, 緒方 洋美, 岩崎 利郎,松本 由紀子, 苔口 昭次, 高津 寛, 山口 耕平,石川 智基, 塩谷 雅英:精液所見と精漿総カルニチン濃度の相関についての検討.日本IVF学会雑誌Vol.17 (2014) No.2 p.67
  3. Gianfrilli D, Lauretta R, Di Dato C, Graziadio C, Pozza C, De Larichaudy J, Giannetta E, Isidori AM, Lenzi A. Andorologia. 2012 May;44 Suppl 1:600-4